みかにっき

ただの僕の日記です。

バッドエンドは想定通り

去年の5月。
ゴールデンウィークは、君と一緒にチーズケーキを作ったり、クッキーを作ったりした。
見慣れた街は、色鮮やかに輝いて見えた。

それは紛れもなく、君のおかげだった。

そんな輝いた世界の中で、僕は、一つの記事を更新した。
https://15222.hatenablog.com/entry/2021/05/05/132217
可愛い彼女の、愛しい寝顔の先に、僕はバッドエンドを見ていた。

後にも先にも、彼女について更新したのは、この記事だけだった。

 

そして数ヶ月、彼女は心の病を患った。
僕らは2人で部屋を借り、2人で新しい日々を過ごすことにした。
そして数ヶ月、彼女は休職をした。
目まぐるしく環境が変わる中、いつしか、バッドエンドのことは忘れていた。
このまま幸福な日々が続いて、僕らは一つの家庭を持つのだ、と信じていた。

 

その日は突然やってきた。
彼女が支離滅裂な理由で、僕に別れを告げてきた。

 

度重なるタクシー帰り、机上に置かれ出した精力剤。ポーチの中の異性からの手紙、誰かの名を呼ぶ幸福そうな寝言。
それらが、洪水のように僕に襲いかかる。

ここ一ヶ月の彼女の行動履歴を見る。位置情報は、平日22時にビジネスホテルを指していた。
なるほど、それでタクシーで帰ってきていたのか。
僕がそれを確認している時分、彼女の位置情報は、某所のリゾートホテルを指し示していた。
(あぁ、実家に帰るって、嘘だったのね。)

新しい男の人とのLINEも見た。
付き合いたての男女の、幸福そうな会話がそこにはあった。

僕と彼女が2人で作った餃子の写真。「見て見て、作ったの!」という一言と共に、送信されていた。
冷凍庫には、食べきれなかったその餃子がまだ残っている。
幸福な僕が作った、愛しいはずの餃子に、僕は強い嫌悪感を抱いた。
(悩み抜いたが、後日ひっそり、餃子をゴミ箱へ捨てた。)

 

 

でも、僕の気持ちは、どこか落ち着いていた。

なぜか?

僕は見ていたからだ。

僕らの行き着く先の「バッドエンド」を。

 

僕がこの感情を受けるのは、至極当然だった。
いや、受けなければならなかった。
それが因果応報というものなのだ。
僕は、甘んじてそれを受け入れる義務があるのだ。
今、この瞬間で、僕の罪は精算されたのだ。

どこか、清々しい気分でもあった。

 

僕が以前やったことが、丸々、自分へ返ってきた。ただそれだけだった。
逆にそれでありがたかった。
こんな時、僕は、恋人にどうして欲しかったかを知っている。
こんな時、僕は、どれだけ苦しくて、どれだけ幸福な気持ちなのかを知っている。
こんな時、僕は、もう恋人に心が戻ることがないのを知っている。

こんな時、僕は、おとなしく別れを受け入れるのが最善だと知っている。

 

周りの人には、「できた人間だね」とか、「優しすぎる」とか、「もっと怒った方がいい」と、いろいろ言われた。
そんなんじゃない。

己の欲せざる所、人に施す勿れ。

太古の昔に孔子が、そして、ふた昔前に父親がくれた教え。ただ、それに従っているだけであった。

 

あと、もう一つ、僕には思惑がある。

「僕と別れてよかった」と、彼女に思われたくない。

 

昔、浮気をして別れた彼女は、新しい彼氏がいる中、僕に連絡をとってきた。
「ねえ、セフレでいいからヤらない?」
僕が嫌だ、と答えると、とある材料を使って僕に脅しをかけてきた。
最悪だ。
結局その彼女にはSNSを全てブロックされた。

 

そして、僕が浮気をして別れた彼女は、とにかくもう大変だった。
別れた僕は、それを受け止める義務があると思った。

あなたのことを殺したい。新しい彼氏ができそうだから、彼への誕生日プレゼントの相談をしたい。
あなたのことが忘れられなかったから彼からの告白は断った。一緒過ごした5年間は、金と時間の無駄だった…。

言い合いにもなった。これから先、関係を構築しようとしていない相手と言い合いをするのは、とんでもなく無益だ。
それを彼女は理解していなかったようだ。
彼女は、少し人間性に問題があったように思う。(サークルの同期に嫌われていたのが、その証明だろう)
人間性の酷さに、愛情がなくなった僕は耐えきれなかった。

結局僕は、SNSを全てブロックした。

 

この2人とは、正直、別れて良かったなぁと思っている。
特に後者の方は、別れた後の暴れっぷりが尋常じゃなかった。
2人とも、楽しい思い出があるから一緒にいたはずなのに、思い出すのは全て悪い思い出だった。

僕は、そうはなりたくない。

彼女(さくらちゃん、と仮置きしましょうか)が思い出す僕との思い出は、幸福なものであってほしい。
彼女に、浮気をして別れた理由を、「僕の人間性」によって正当化されたくない。
幾度となく彼女を助けた僕のやさしさを、いつか、噛み締めてほしい。
自分の至らなさを、反省してほしい。

 

そのためには、僕とさくらちゃんとの最後の記憶は、「やさしいもの」にしなくてはならない。
僕はとにかくさくらちゃんを肯定した。
さくらちゃんをの新たな恋を受け入れた。
いつも通り、楽しく、一緒に過ごした。
浮気を告白してくれたその日以降、一度も、浮気した事実を責めなかった。

さくらちゃんに、「別れてよかった」と言わせないために。

 

 

長くなりましたが、まだ続きます。
これは自分の気持ちの整理のためと、備忘のためです。

どんなに苦しい感情も、月日が経てば忘れてしまう。
文字に残せば、過ぎし日の感情に触れられる。
だから、僕のメモ帳に、もう少しお付き合いください。

 

僕は、元恋人の幸福を祈ることができない。

元彼女のあきちゃんも、さくらちゃんも、「心奏くんには幸せになってほしい」と、言ってくれました。
でも僕は、全くそうは思えません。
あきちゃんも、さくらちゃんも、不幸になってほしい。

だから僕は、会話の端々に、遅効性の弱毒を混ぜる。

「精神科の通院サボっちゃって、そこから行ってないの?でももうさくらちゃんは治ったから、大丈夫だよ!」
(完治は存在しない、症状が寛解しているか分からないよ。だから、また予約入れ直して、通院しなきゃダメだよ!)

「有給なのに今日はお仕事するの?忙しそうで大変だね、、がんばってね!」
(有休に仕事するの?!休みの日は仕事しないって話だったじゃない、無理しないで!今日は休みな!)

「結局自分が黙ってお仕事引き受けて、他の人に回せないんだね。。でも自分がやりたくてやってるんならいいね!」
(それだとさくらちゃんの負担が増えちゃうから、どうしたら他の人にやってもらえるか、ちょっと考えてみようよ。1人で背負っちゃダメだよ!)

不思議と、すらすらと口から出る。自分の心とは正反対の言葉。
ああ、僕は、この人のことを心の底から好きと言えなくなったんだな、と。
そう思って、嬉しいのか、悲しいのか、分からない感情になった。

 

 

 

話がだいぶ脱線しました。

 

とにかく、僕は、去年のゴールデンウィーク、幸福の最中で見つめた未来に、いま辿り着きました。

もし僕が、自分の行いに責任と覚悟がもてない人間だったら。
きっと今頃、烈火のごとく怒り狂っていたことでしょう。
さくらちゃんを責め、嫌味を言い、もしかしたらあきちゃんみたいになっていたかもしれませんね。

でも、僕はそうじゃない。

因果応報として受け入れた。
この1年半に意味を見出し、過去ではなく未来を見つめている。
僕は、この1件を通して、自分のことが少し好きになりました。

 

終わりはバッドかハッピーか。

答えはバッド。

昔の自分、バッドエンドを描いてくれてありがとう。
今の僕が、こうしていられるのは、多分そのおかげです。

答えはバッド。

されどハッピー。
だと、思うように。
前を向いて、これからも生きていきます。