夢を見た。
もう一生会えないと思っていた人が、僕の目の前に現れる夢だ。
その子はいつも通り、笑顔で自分の現状を嘆くようなことを言っていた。
僕はいつも通り、ワハハと笑って見せた。
僕は、自分の想いを伝えなかった。
目が覚めた。
僕は、あの子にまた会えて嬉しかったな、と思った。
そして、もしあの子に自分の想いを伝えていたらどうなったのだろう?と考え始めるようになった。
それから2週間ほど経って、また夢を見た。
また、あの子がいた。
僕はあの子と他愛もない話をしている。
夢の中の僕はどこか冷静で、(今ここで想いを伝えなければ)と思った。
そして、夢の中の僕は現実と違って、躊躇することなく想いを伝えることができた。
「君のことが好きだったんだよ」
確か、こんな台詞を吐いた。
するとあの子は、僕が想像した通りに戸惑って見せて、その後で
(すき)
と、口を動かしたように見えた。
なぜだかその時だけ、あの子の声は聞こえなかった。
その後も、確か、何かをあの子と話したような気がする。
悲しいことに、それがなんだったかはもう思い出せない。
目が覚めた。
やっと終わったんだ、と、僕は思った。
僕がしていた終わりが来ない恋は、ようやく今ここで、終わったんだ。
あの子が僕の想像した通りに戸惑ったのも、あの子が僕に好きと伝えたのも、僕が見た夢だからだ。
僕の都合のいいように作られた世界だからだ。
それでもいい、それだからいいと思えたのは、あの子が僕の手の届かないところに行ってしまっているからだろう。
僕の恋はいつも、僕が始まりを作らないために終わりが来ない。
でも、それでいいんだと思うようになった。
これからもきっと、誰かに終わらない恋をするのだろう。
でも、それでいいんだ。それが僕の恋の仕方なのだ。
でも、それがいいんだ。そうして生きていくのが僕には合っているんだ。
そう気づかせてくれたのは、もうこの世にはいないあの子だった。